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[イベントレポート/前編] 読むことを哲学する時間 Re:cord 『嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書』からはじまる〈比喩〉のはなし

2022年02月01日

【イベントレポート】

2022年1月15日(土)に開催しました、読むことを哲学する時間 Re:cord『嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書』からはじまる〈比喩〉のはなし

のレポートをお送りします。

 

Introduction

Re:cordは、「読む」ことを創造的なことととらえて、色々な試みをする会です。

今回は、『嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書』からはじまる〈比喩〉のはなし というタイトルのイベントを開催しました。   

  

【前半】

ラルフ・ジェームズ・サヴァリーズ著
『嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書
  自閉症者と小説を読む』(みすず書房)

イベント前半は、この本の一章「海のように揺らめく世界から」にフォーカスしてお話ししました。

  

 

文学教授の著者・サヴァリーズ氏は、障害学や神経多様性を研究、

また、詩集や自閉症の息子さんの半生を振り返るメモワールもつくる作家です。

1章に登場するティト・ムコパディエイさんは、幼少時から発話が難しいながら、母親ソマとある学習法から「言葉」を習得して、詩的な言葉を綴る作家になります。   

  

 

「嗅ぐ」ことや「聴く」ことに、豊かな感性を、

「見る」ことに、外からはとても想像しにくいような感覚をもつ・・・

例えば、少年時代の彼は、人の顔がどんな風に見えているかたずねられ、こう答えます。

 

 顔は波のようです。一瞬も同じではない。海で見る一つひとつの波をおぼえていられますか? 

                    音の夢ー『ぼくは考える木』p391 ポーシャ・アイバーセン著(早川書房

 

自閉症者自身が書いたものを読むと、ものの見え方や感じ方は様々なのだと気づくことがよくありますが、研究分野などでも、その像は変わってきているそうです。参考に、2冊の本も紹介しました。
 

 ❍『自閉症学のすすめ』松本卓也編/ミネルヴァ書房 

    巻末に、発達障害の方が書いた本のリストが時系列でまとめられています。

 ❍『みんな水の中』横道誠/医学書院シリーズケアをひらく  

    特異な知覚世界を鮮明に描きながら、そもそも「私もあなたも脳の多様性を生きている」のだというこの本は、

    サヴァリーズさんの本と親和性があると思います。

 

サヴァリーズ氏は、19歳のティトと出会ってインタビューをしますが、その時の印象をこう表現しています。

 

〈諦念〉というリーダーと〈希望〉というフォロワーが反時計回りにくるくると回っている。

                               『嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書』本文p46

 

 

当時ティトさんはすでに3冊の本を出版していましたが、どこかに「多くは望まない」という気持ちがつきまとい、その奥に「普通学級でえられる刺激を受けたい」という強い思いを、サヴァリーズ氏は見抜いていたようです。

その後二人は、スカイプを使って読書会を始め、メルヴィル『白鯨』を読むことになります。

 

サヴァリーズ氏には「絵や匂いや触感で考える文学」と、「感覚で対象と関わる才能をもつ自閉症的な世界の関わり方」は近いのでは?という予感がありました。

ティトさんは、人の声も木々の音も分け隔てなく、過剰に受け取ってしまうといいます。人の体温や身の廻りの細かな変化に影響を受けやすいなど、自閉的というよりも、つながりがとても強いようにもみえます。そんな彼は、「白鯨」の荒々しい海の情景や鯨の姿を自分と重ねます。

 

ハーマン・メルヴィル『白鯨』(新潮社)

 

この1章を通じて、「比喩」に興味をもちました。 

 

人はふつうフォーカスする先を変えながら、部分的にものを感じとっています。

ある程度コントロールできるともいえるし、そうでない部分もあると思います。

生活でふだん使っているカテゴリーを外して、あるものを別の何かに見立てたり、似ている面を見つけたり…比喩にはそういう愉しさ、おかしさがあります。

 

ところで、「嗅ぐ文学」というタイトルも、文字通りの「嗅ぐ」と、なにか「かぐわしい」という喩えとの、あいだを味わうような感じもします。

ティトさんは「本を嗅ぐ」ことの楽しさを夢中に綴っていますが、読み手は自分なりの嗅覚で誘いこまれているわけです。

それなら、色々な人が好きな比喩表現を聞いてみたい…とたずねてみたのが、後半タイムです。

イベントレポート/後編